メガネの小言。

金髪とピアス。

2017.10.27 Friday








金髪の少年が来てもう8年になる。

高校を退学した少年は
早すぎる社会人として
生活資金をかせぐために
ひばり工房にやって来た。

















少年野球で活躍した彼は
とにかく返事と挨拶は完璧だった。
野球が好きすぎてテレビゲームなど
全く無縁の古風な少年である。



愛車のホンダ ズーマーで
晴れの日も雨の日も
凍えそうな冬の間も手足に
しもやけを作りながら出社した。

雪が20センチくらい積もったある日
他の従業員の遅刻の連絡が入る中、
少年はコケながらも楽しそうに
時間通りにやって来る。
親が当たり前のように
送り迎えする時代に
それも無縁の少年である。



初めての給料から毎月1万円ずつ
貯金させた。

18歳が近くなるとその貯金を
握りしめて自動車学校に通い始めた。
免許取得後、マイカーが欲しい少年は
残り少ない貯金と俺からの借金で
型遅れのシャコタンクラウンを購入。


これも親の力を借りることなく
少年はやり遂げた。


少年はしもやけから解放された。














素直過ぎる少年はなんでも吸収した。
他の仕事を知らない彼に
経験値を増やす為にいろんな催事に
同行させた。


爆発的に売れた催事も
壊滅的に売れなかった催事も
夜の街の お酒で反省会。
とにかく何でも語りあった。
















社長のお遊びにも積極的にお手伝い。





























年明けに入籍した彼は
いつのまにか青年になり
ふわふわした少年の影は姿を消していた。


休みを取らずに働く社長に対し
「そんなに任せられないのか?」と
食ってかかる始末。

その矢先に過労で入院。
否が応でもでも青年が矢面に立つ。

語り合って来た事を
惜しみなく発揮した 青年は
代打ではなく 4番打者の
力をつけていた。













そんな青年も9月に父親になった。

お宮参りの帰りに寄った
青年家族の笑顔を見て思う。


会社の価値や知名度を上げる事ばかりに
気を取られ過ぎていた。



人に時間を費やしたいと思う。






青年は10月から店長になった。

金髪の少年の8年の記録である。



あの頃の面影はピアスに残ってた。










おわり。